大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)1010号 判決

控訴人は、原判決を取り消す。被控訴人が昭和二十三年五月二十日付でした別紙目録記載の農地についてなした買収の無効なことを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求めると申し立て、被控訴代理人は、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とするとの判決を求めた。

当事者双方の事実及び法律上の主張は、次の事項の外、原判決の記載と同一であるから、これを引用する。控訴人は、次のように付け加えて述べた。

一、本件における買収土地が、一筆の土地の一部分であり、しかも買収令書その他買収計画に関する書類によつては、その土地のいかなる部分を買収するか、全く不分明であることは、原判決記載控訴人の主張(二)のとおりであるが、買収区域を特定しない買収令書は、事実上その範囲について争がなくても、買収令書自体において、買収区域を特定しなければ、買収令書は違法であつて、(昭和二十六年三月八日最高裁判所第一小法廷判決参照)右の違法は、買収を当然無効たらしめるものである。

二、また原判決記載控訴人主張(四)の事実につき、本件係争地が存在する真実の地番は、栃木県上都賀郡粟野町大字口粟野字檜木谷千八百七十五番の一、同二の山林合計五反八畝二十六歩で、山林なるが故にこれを実測すれば、一町三反一畝十四歩にほゞ相当する。買収令書に記載せられた同所千八百九十九番畑六反十歩及び千九百番の一畑七反一畝四歩は、本件土地に隣接する、粟野川に面した梅林及び栗林、耕地等二筆にあたり、本件係争土地とは全然別個の土地である。

三、以上控訴人主張の各個の場合は、原始的に行政処分の重大な瑕疵ある場合に該当し、その買収手続は、全部無効である。なお、昭和二十四年十一月二十四日千九百番の一畑七反一畝四歩の一部について、被控訴人主張のような買収の取消がなされたことはこれを認める。

被控訴代理人は、次のように付け加えて述べた。

一、原判決記載の被控訴人の主張のうちに、檜木谷千八百九十九番一、田六反十歩とあるのは檜谷千八百九十九番一、畑六反十歩の誤である。

二、檜木谷千九百番の一、畑七反一畝四歩につき、当初の買収令書に記載せられた買収部分四反五畝十五歩のうち、四畝十五歩は、誤びゆうであることが判明したので、昭和二十四年十一月二十四日この部分につき買収処分が取り消された。

三、本件係争土地の存在する地番が、買収令書に記載せられた檜木谷千八百九十九番の一、及び同千九百番であることは、粟野町役場保管の耕地図(乙第十号証及び乙第十五号証)によつて明白である。

(証拠省略)

三、理  由

被控訴人に対し、別紙目録記載の農地の買収の無効なことの確認を求める控訴人の本訴請求は、次の事項を付け加える外、原判決の記載と同一の理由によつて、その理由がないものと認めるから、これを引用して、控訴人の本訴請求を棄却すべきものとする。

一、農地の買収の無効確認を求める本訴請求においては、国を相手方とすべきであつて、買収令書の交付機関に過ぎない被控訴人たる知事は当事者適格を欠き、従つて本訴の管轄も、国の代表機関の所在地である東京地方裁判所であるとの被控訴人の主張について、本訴は、都道府県知事たる被控訴人が、政府の機関として、農地の所有者に交付した買収令書の違法なことを理由として、右令書に基いて買収行為の効力を否認し、これに基く一切の手続の続行を拒み、それら処分の無効なことを主張するものであつて、その実質においては、行政庁の違法な処分の取消を求める訴と、甚だ近似するものである。従つてその被告を、後者の訴と同様と、その処分をした行政庁とすることも、決して確認の訴の目的を到達することができないものと断ずることはできない。右被控訴人の主張は、これを採用しない。

二、買収土地の範囲が不明であるとの主張(原判決記載控訴人主張(二))について、本件買収の土地が、いずれも一筆の土地の一部分であることは、当事者間に争がない。かゝる場合、その目的たる土地は買収令書において特定することを要し、買収の目的たる土地が何たるかを知ることのできない買収令書は違法であり、その違法は、買収処分の無効を来すものと解せられる。(昭和二十六年三月八日最高裁判所第一小法廷判決参照)。よつて本件における買収令書には、買収の目的たる土地が特定せられていないかどうかについて判断するに、その成立に争のない甲第十六号証の一、二によれば、本件買収令書には、控訴人所有にかゝる栃木県上都賀郡粟野町大字口粟野字檜木谷千八百九十九番畑六反十歩のうち四反八畝、及び同所千九百番の一畑七反一畝四歩のうち四反五畝十五歩を、昭和二十二年七月十四日粟野町農地委員会が定めた買収計画に基き、昭和二十年十一月二十三日現在における不在地主所有の農地として買収するものであることが記載せられている。右買収令書の趣旨によれば、以上買収の目的たる土地は、右昭和二十年十一月二十三日現在不在地主たる控訴人が、同所千八百九十九番及び千九百番の一において、賃貸等により他人に耕作せしめていた小作地の全部を指称するものであることは明白であり、しかもその成立に争のない乙第一号証乙第二号証の二、及び原審における検証の結果によれば、昭和二十年十一月二十三日現在において、同所千八百九十九番畑六反十歩については、訴外山野井孫一郎外五名が、買収令書に記載されているように、合計四反八畝の畑を、また同所千九百番の一畑七反一畝四歩については、訴外松本宇吉外五名が、合計四反一畝の畑を、それぞれ控訴人から賃借して現実に耕作していたものであることが認められるから、右買収令書において、買収の目的たる土地は特定せられていたものと認定しなければならない。尤も千九百番地における現実の耕作地は、前述のように合計四反一畝であつて、買収令書に記載せられた四反五畝十五歩は、誤であるといわなければならないが、被控訴人が、昭和二十四年十一月二十四日誤びゆう発見に基き、右買収令書中四畝十五歩の買収を取消訂正していることは、当事者間に争のないところであるばかりでなく、かゝる程度の誤は、右買収令書に基く、買収の効果を全面的に当然無効ならしめるものとは解されない。

なお右耕作面積についての、原審及び当審証人福田光助、原審証人広田林三郎、当審証人伊藤かねの各証言は、当裁判所これを採用しない。

三、次に前に記載した訴外人等において当時賃借耕作していた小作地が、果たして、買収令書に記載せられた同所千八百九十九番畑六反十歩及び千九百番の一畑七反一畝四歩の一部であるか、または控訴人が主張するように、同所千八百七十五番の一、二の山林合計五反八畝二十六歩であるかについて判断するに、その成立に争のない乙第十五号証(粟野町役場保管にかゝる耕地図)、乙第十六号証(昭和二十七年五月十一日測量の実測図)、乙第十一、二号証(土地台帳謄本)と当裁判所の宇都宮地方法務局粟野出張所保管の耕地図及び現場の検証の結果とを綜合して考察すれば、右小作地は、買収令書に記載せられているように、同所千八百九十九番及び千九百番の一に該当するものと認定するを相当とすべく、控訴人の援用する甲第二号証(粟野町役場保管の山岳図で、当裁判所が検証した前記宇都宮地方法務局粟野出張所保管の山岳図に相応するもの)によつては、未だ右認定を覆すに足りない。控訴人は、前記買収令書に記載せられた地番は、本件小作地に隣接する粟野川に面した梅林及び栗林、耕地であると主張するが、前記乙第十五、十六号証とその成立に争のない乙第十三号証の一から五まで、第十四号証の一、二、三と当裁判所における現場の検証の結果によれば、控訴人の主張する梅林及び栗林等は、粟野川の瀬が同所東北面において、対岸の方向に向つて流れるため、本件係争の土地と河流との間に漸次発達した寄洲部分を開墾した地域であつて、同所千八百九十九番及び千九百番の一の畑とは、別個の土地であることが認められ、当審における証人福田光助、小杉多平、鈴木彦作、飯塚平吾の各証言、その成立に争のない甲第九号証、第十号証の一、二によつても、右の認定を覆えし、控訴人の主張事実を認めしめるに足りない。

以上の理由により、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴はその理由がないから、これを棄却し、控訴費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のように判決した。

(裁判官 小堀保 原増司 高井常太郎)

(目録省略)

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